馬の栄養学 「ミディアムワークの馬への給餌(フィーディング)の目安 」

 

ヘイリー・ウェインライト B.Sc.(ブルーチップフィード・馬の栄養師)

 

(文章の転載には必ずこのページのリンクをお願い致します)

 

 

はじめに

「私の馬はさほどハードな運動は行わないミディアムワークタイプです。どんなタイプの餌をどのくらいの量をあげればいいのですか?」

現在では、大麦やふすまなどが既にミックスされているレディーミールが販売されていることにより、我々の「だいたいこのくらいだろう」的な給餌が無くなり、フィーディングは簡単になりました。

しかしながら多くのオーナーが、運動が軽めから中間に変わったとき、どんな餌をどれくらい与えてよいのかわからないという混乱が起きています。

軽いメンテナンス程度の仕事しか行わない馬なら、フィーディングはいたって簡単です。穀物よりとにかく草類を与えて、ハイファイバーな食生活を心がければいいだけです。しかしながら、少しずつ競技思考な激しい運動に変わっていくとなると、筋肉や肉が落ちたりしないか、エネルギーに欠けるのではないかと、フィーディングプログラムを変更するのは大変です。

今回はそれを紹介しますが、どんな食生活での変更も、とにかくゆっくりと少しずつが絶対です。何週間もかけて変更していきましょう。

ミディアムワークの定義は?

さて、ミディアムワークとは実際にどれくらいの運動のことを指すのでしょう?

プロの競走馬、総合馬、エンデュランス馬のことを考えてみてください。彼らは毎日のトレーニングを行い、頻繁に競技に出場します。

そして、ほとんどの方が毎週の障害・馬場馬術、ハンタートライアルに出ている馬はハードワーカーだと思っていることと思います。しかしながら、これらの馬は競走馬や耐久競技の馬より、実はフィットネスの具合は下回るのです。

もちろん、個々の馬によって違いはありますが、ミディアムワークとは、7日間のうち6日間、1日1〜2時間、充分な量の速足といくらかの駈足を取り入れた野外騎乗を行い、それから、馬場の中で1時間ほど充分な運動をし、1週間に1回競技に出場する、というのが目安です。ライトワークとはすなわちこれ以下の運動量となります。

働く馬への餌の量と種類の定義はここ数年で大きく変わってきているといいます。これは馬の生理医学の中でも更に研究中のサブジェクトでもあり、特に腸の機能から良い品質の草類を充分に与えることが重要になってきます。

毎日の全体消費量は

全体消費量、すなわちトータルデイリーインテイクは、その馬が毎日食べる量すべてを表します。またその量とは、馬の体重の2%が最適と言われています。つまり、500キロの馬なら、毎日食べるべき量は10キロとなります。

更にこの量は配合飼料(穀物やキューブ)と草類(乾草や青草)に分かれます。この比率は馬の能力を最大化する為に、仕事量によって変化します。例えば、軽い仕事量であれば、25%を穀物やキューブにし、残りの75%を乾草やヘイキューブにします。ミディアムワークの場合は50:50もしくは40:60にしましょう。常に新鮮で汚染されていない草類を与えることが大切です。

コンパウンドフィード

既に様々な栄養分がキューブになっているコンパウンドフィード、これらは既にエネルギー、プロテイン、ビタミン、ミネラルがバランスよく配合されています。それぞれの馬の運動レベルによって種類を選び、商品に表記されているガイドに従って与えましょう。それぞれの馬が個々に違いますが、こういう話がよくあります。「私の馬はトップレベルの競技に出場していますが、与えているコンパウンドは通常の馬やポニーに与えるものと同じものにしたほうが気性に合っているといいます」。ですから、馬がハードに仕事をしているからといっても、大きくフィーディングを変更したりしないでください。昔からよく言いますが、これから運動する予定量に見合う量の餌を与えるより、今やっている運動量を考えてフィーディングをすべき、と。

フィーディングを決めるにはいくらかの経験が必要で、栄養のバランスを崩さない為にもビタミンやミネラルを充分に考慮しなければなりません。記載されている量より少なめに与える場合は特にミネラルやビタミンの摂取をサプリメントで補いましょう。

草類

どれだけハードに働いていようと、充分な量の草類を与えることが腸にとって最も重要です。馬の体は草を食べるようにデザインされていますので、高い繊維質の食べ物が働く馬には必要です。この解剖生理学的機能に基いた食生活を我々の利便性だけで変えてしまうことはできません。イースト菌は繊維質の消化吸収に大変役に立ちますので、一緒に混ぜると効率の良いフィーディングができます。冬場は乾草の葉酸が足りなくなる季節ですので、そのサプリメントも効果的です。

自分の馬の仕事量に見合った食生活をしっかりモニターしてください

バランス

栄養はエネルギーになり筋肉を作り上げスタミナをつけますが、充分すぎる栄養素は心臓や肺や腱や関節に負担をかけることになります。また餌の与えすぎによる問題行動も増えます。馬の心理的、メンタルヘルスの面で最も重要なのは青草の生えた広い放牧場です。きれいな空気をすって、自由にリラックスできる環境が必要です。狭いパドックではなく、青々とした草がたくさん生え、駆け回ることができる放牧場が必要です。イギリスでは特にエンデュランスや競走馬は放牧する時間が段々と増えてきています。

経験のある馬のオーナーは馬を目で見て健康状態をチェックし、餌の量や種類を決めていきます(匠の技、つまりアートですね)。コンディションを事細かにチェックすることは最も重要ですが、フィーディングにもサイエンスを取り入れる必要があります。馬の飼育はアート&サイエンス、コンディションと食生活を正して、健康を保ちましょう。

フィーディングの大前提 絶対に守りたい8カ条

フィーディングには絶対に守るべきルールがあります。このルールは子供たちがポニークラブに入って最初に学ぶべきことくらい非常に大切なルールです。必ず実践してください。

1、餌を変えるときは少しずつ
馬の消化器官が餌にあわせられるよう、ゆっくり変えて行ってください。乾草が違うメーカーや違う採草地になってもこれは適用させましょう。

2、予定の運動を考えて餌を増やさない
先ほども出てきましたが、餌は実際に運動した分を考えて増やします。運動量と餌の量のバランスの崩れはアゾチュリア(馬のラブドマオリシス、乳酸により筋肉がダメージを受ける病気)やリンファンジャイティス(リンパ管炎)になります。しかしながら、もし運動量が減る予定であれば、先に餌の量を減らしてください。

3、良い品質のものだけを与えよ
もし餌がホコリっぽく色が変色しているようだったら、その栄養価は低いだけでなく害をもたらします。特に乾草は品質が落ちると莫大な菌の胞子に汚染され呼吸器に問題を引き起こします。

4、草類がいつでも食べれるようにせよ
馬の消化器官は常に食べていることを目的としつくられています。胃は大量の餌を食べれるようにはできていません。続けて少しずつ食べれるようにしなければいけません。高品質の乾草を、餌の時間以外にも常に与えましょう。

5、量より重さではかる
馬の餌をスコップ何杯と量っている場合が多いと思いますが、それぞれの餌の種類はそれぞれの重さがありますので、見た目の量より重さで餌の量を決めましょう。

6、餌を与えてすぐに運動させない、また運動したあとすぐに餌を与えない
運動中は筋肉への血液の配給が高くなっています。よって消化器官への機能は落ちています。その時にもし与えると器官が上手く働かず、せん痛を引き起こします。噛まずに飲み込む馬がいたら要注意です。

7、いつも同じ時間に与えよ、穀物は少なめに
飼料 の比率は馬の運動量によって変わりますが、餌は必ず同じ時間にルーチンで、同じインターバルで与えましょう。

8、綺麗な水をいつもそばに
但し、餌を食べたすぐあとに大量の水は飲まさないようにしてください。乾草や穀物は青草より水気が少なくなっています。よって胃の中で水とミックスさせることは非常に大切ですが、大量の水ではそのまま洗い流されてしまいます。水は新鮮なものを与えましょう。川や井戸水を使用する場合は水質検査を怠らないよういにしましょう。

(2007年 文章の転載には必ずこのページのリンクをお願い致します)

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